Astepインタビュー|キービジュアル

三代続く照明一家から
未来へと踏み出すアステップの歩み 

前編

2014年に設立した「Astep(アステップ)」は、イタリア照明史を語るうえで欠かせないブランドです。そこには創業者アレッサンドロ・サルファッティのルーツが関わっています。

彼の父はイタリア照明に工業的なアプローチで革命を起こしたブランド「ルーチェプラン」を興したリカルド・サルファッティ。そして祖父は照明ブランド「アルテルーチェ」を創業し、フロスの名作照明「モデル2097」を手掛けたことでも知られる伝説的照明デザイナー、ジノ・サルファッティです。アステップの現在を知るため、今回アレッサンドロ・サルファッティ氏にインタビューを行いました。

Index

  • ブランド設立までの歩み
  • サルファッティ家の「進化」
  • – サルファッティ家に伝わる「光の考え方」
  • – サルファッティ家の3世代の違い
  • 関連商品
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ブランド設立までの歩み

—ジノ・サルファッティ氏が、引退とともにフロスに売却してしまった数々のデザイン照明の権利を、孫として買い戻したのがまさにあなたですね。そこからアステップを立ち上げるまでの当時の印象的な・エピソードについても教えてください。

Astepインタビュー|アレッサンドロ氏ポートレート

アレッサンドロ・サルファッティ氏

私は彼の孫なので、多少ひいき目に聞こえるかもしれませんが、ジノ・サルファッティはまさに天才でした。そして多くの天才と同様、妥協を許さない明確なビジョンを持っていました。1973 年に引退を決めたとき、彼は完全に照明業界とプロとしてのキャリアから身を引き、隠居生活に入ったのです。

Astepインタビュー|モデル2097

現在でもモデル2097はFLOSが生産・販売を行っている

彼にとって、自分のいないアルテルーチェは、まったく別物でしかなく、たとえ一緒に働いていた息子 ―― 私の父リカルドでさえも、その継承者にはなり得ませんでした。そしてジノはすべてを FLOS(フロス)に売却しました。

Astepインタビュー|ルーチェプランのショールームの様子

当時のルーチェプランの照明コレクションの数々

私は当時、まだ 3 歳でした。年月が経ち 2000 年代初頭には、私はルーチェプランで営業ディレクターを務めていました。父がオーナー兼 CEO でした。

あるとき私は父にこう言ったのを覚えています。「パパ、おじいちゃんのデザインをまた世に出してみたらどう?」。でもすぐに父がこの話題にあまり触れたくない様子なのに気づきました。

彼にとっては、それはすでに終わった物語だったのです。

Astepインタビュー|ブランドの理念を表す3つのイメージ画像

さらに 10〜15 年が過ぎ、ルーチェプランでの自分の役目を終えた私は、アステップを立ち上げました。そのビジョンは、デザイン、テクノロジー、サステナビリティを統合することでした。そしてその「デザイン」の部分には、ジノから受け継いだことも含まれていました。自分がどこから来たのかを語り、ジノの仕事に敬意を表したかったのです。

Astepインタビュー|倉庫を歩く2人の子どもの後ろ姿

そうして、私はジノのデザインをアステップのコレクションに加えることを決め、2016年にFLOS の当時のオーナー兼 CEO だったピエロ・ガンディーニに連絡を取りました。
彼の父、セルジオ・ガンディーニこそが 1973 年にアルテルーチェを買収した人物です。ピエロと私は長年の知り合いで、この件で話をしたときも、お互いの間には深い敬意と、共通するレガシーへの理解があったため、自然と合意に至ることができました。

サルファッティ家の「進化」

— サルファッティ家は3代にわたって照明に深く関わっていますが、家系特有の、周囲の他の家庭と違うと感じる考え方や習慣などはありますか?

Astepインタビュー|ジノ・サルファッティ氏が老境を過ごしたコモ湖のヴィラ

アレッサンドロ氏が「魔法のような場所」と呼ぶコモ湖のヴィラ。1950 年代の終わりにジノ・サルファッティ夫妻が購入したもの。

私はまずジノから照明について学びました。彼について本を読み、彼が作ったコモ湖の家で実際に生活し、今でも家族でよくそこへ休暇に行きます。だから彼の感覚が、今でも私たちの中に残っていると感じます。私が思うに、ジノにとって「光」は「闇に勝つための手段」でした。

Astepインタビュー|モデル537スタンドライトの頂上にあるハンドルを掴む手

持ち運び用のハンドルが設けられた有線テーブルライト「モデル 537」

だから彼は、当時はまだ存在しなかった「移動できる光」に強い関心を持っていました。必要な場所に光を届け、逆に不要な場所には影や暗さを残す。なぜなら、均一で明るすぎる光は退屈で疲れるからです。だから彼は、影や暗がりを活かした照明を追求しました。
今見ても、当時の製品の多くには、ワイヤレスではなくても持ち運び用のハンドルが付いています。それは「必要な場所に光を持っていける柔軟性」を象徴しているのです。

— サルファッティ家の3世代、それぞれの違いを端的に表現するとどうなりますか?

私たちサルファッティ家は、三世代にわたってまったく異なる歴史的背景の中で照明ビジネスを始めました。祖父、父、そして私。それぞれが異なる時代に属していて、その時々のイタリアやヨーロッパの状況が私たちの仕事に強く影響を与えています。私たちを端的に説明すると、以下のようになると思います。

Astepインタビュー|ジノ・サルファッティ氏ポートレート
Astepインタビュー|アルテルーチェ・ロゴ

アルテルーチェを創業

Gino Sarfatti

ジノ・サルファッティ

Astepインタビュー|リカルド・サルファッティ氏ポートレート
Astepインタビュー|ルーチェプラン・ロゴ

ルーチェプランを創業

Riccardo Sarfatti

リカルド・サルファッティ

Astepインタビュー|アレッサンドロ・サルファッティ氏ポートレート
Astepインタビュー|アステップ・ロゴ

 アステップを創業

Alessandro Sarfatti

アレッサンドロ・サルファッティ

ジノ――1950〜60 年代イタリアの「光の職人」
リカルド――1980〜90 年代ヨーロッパに「美しいものを、より多くの人に」
アレッサンドロ――現代における「時代を超えた発明」

ジノ――1950〜60 年代イタリアの
「光の職人」

リカルド――1980〜90 年代ヨーロッパに
「美しいものを、より多くの人に」

アレッサンドロ――現代における
「時代を超えた発明」

Astepインタビュー|アルテールーチェのショップの様子
Astepインタビュー|アルテールーチェのショップディスプレイを行うじのジノ・サルファッティ氏

Arteluce shop, Via della Spiga, Milan

祖父ジノと彼の創業した アルテルーチェ(1939 年設立)は、戦後のイタリアの活気とダイナミズムを象徴する存在でした。彼は 1950〜60 年代の職人的かつ工業的なエネルギーの中に身を置き、自らを「光の職人」と呼んでいました。ミラノの工房で熟練の職人たちと共に過ごし、照明器具を実際に自分の手で形づくっていたのです。その数は 600 点以上にのぼります。

Astepインタビュー|モデル262 ウォールライト

Model 262

Astepインタビュー|モデル566 スタンドライト

Model 566

Astepインタビュー|モデル2065 ペンダントライト

Model 2065

彼は電球から出発して、それを最も効果的かつ美しく引き立てる舞台を探し続けました。モデル 566 やモデル262 は、その代表例です。
また、1951 年には新素材のメタクリレートをいち早く照明に取り入れたモデル2065 も象徴的です。この素材はガラスのような見た目と光の拡散性を持ちながら、軽量で壊れにくく、コストも抑えられるため、電源コードだけで吊るせて、輸送も簡単にできました。

Astepインタビュー|リカルド・サルファッティ氏

Riccardo Sarfatti

Astepインタビュー|パオロ・リザット氏

Paolo Rizzatto

Astepインタビュー|コスタンザ スタンドライト

Costanza

Astepインタビュー|ロラ スタンドライト

Lola

Astepインタビュー|ベレニーチェ デスクライト

Berenice

祖父の後、私の父リッカルドは母とパオロ・リザットとともに 1978 年 ルーチェプランを設立しました。彼らは当時の高級照明市場の裾野を広げたいという明確なビジョンを持っていました。ルーチェプラン は、金型に投資して、それまでより手に届きやすい製品を生み出すという、当時としては革新的で勇気ある取り組みを行いました。コスタンザ、ローラ、ベレニーチェ、ティターニア、メトロポリといった製品群は、アルテルーチェ 時代の作品とは異なる、より工業的・技術的なアプローチの表れでした。

Astepインタビュー|アレッサンドロ氏ポートレート

Astep の主なテーマのひとつは「進化」です。それは“一歩ずつ”を意味する社名にも込められています。サルファッティ家の世代を超えたこれらのテーマは、私の中でも最も心に近い話題のひとつです。いつかこのテーマについて本を書きたいと思っていて、歳を重ねるにつれて、その思いはますます強くなっています。

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