マイケルアナスタシアデス ブランドのペンダント照明、モビール・シャンデリアの展示風景

マイケル・アナスタシアデス
人気デザイナーの情熱とその原点 

後編

こちらの記事の後編です

世界的照明デザイナー、マイケル・アナスタシアデス氏の来日トークセッションレポート後編です。「マイケルアナスタシアデス」で実際に氏がデザインしたプロダクトの実例から、自身のアトリエで行うオリジナルブランドのものづくりと、大手メーカーとの協業との違いについてもお話いただきました。併せてトークセッションの最後に行われたインタビューの様子も一部お届けします。

Index

  • モビール・シャンデリア
  • 大手メーカーとの違い
  • メッセージ
  • セッション後のインタビュー
  • – 倉俣氏のデザインと出会い
  • – 「ピークス」のデザイン思想
  • – 照明デザイナーとしての転機になった言葉
  • 関連商品
  • 関連記事

新たなデザインの探求を続ける中で、様々な素材や実験的なアイディアにも挑んでいます。その一つが「モビール・シャンデリア」。空中で不完全なバランスを保つ、モビールを照明に取り入れたコレクションです。多くのバリエーションをデザインしましたが、美しく設えるためには非常に手間がかりました。
この作品はどれをとっても世界に2つとないユニークなものです。その背景には、シェードの球体がそれぞれ手吹きガラスで作られていることがあります。重量を精密に揃えることは不可能なので、1台ごと個別にバランスを取って設計する特注品のような生産を行なっています。

モビール・シャンデリア制作の様子
パティネーション処理された真鍮の一例

パティネーション処理された真鍮の一例

2本の棒とガラスの球体からなる、シンプルな構造に見える作品ですが、実際には100を超える部品からなる、精密に設計されたデザインです。黒く見えるカラーも塗装されたものではなく、真鍮にパティネーション処理を施すことで着色しています。英国にある工房で、職人が一つひとつ生産しており、製造できる数にも限りがあります。高い品質を保つために製造にも時間を要するため、値段も高くなってしまいます。

※人工的に金属表面に錆を形成させ、味わいのある古色(パティナ)を生み出して着色する技法。本製品では、錆のうえにさらにクリア塗装被膜を施し、表情をコントロールしています。

2017年のユーロルーチェ会場でのモビール・シャンデリア

Michael Anastassiades' presentation at Euroluce, Salone del Mobile, Milan in 2017.

このように製造に時間がかかる高価格モデルは、おそらく大手メーカーに提案しても売れないと言われたでしょう。しかし興味深いことに、モビール・シャンデリアは「マイケルアナスタシアデス」の作品でも一番売り上げに貢献するものになっています。それはこの作品がユニークで、他にはない特徴を持ったデザインだからと考えています。

複数モデルのモビールシャンデリアのコンビネーション

こうした点は大手メーカーで発表する製品と自らのオリジナルブランドで出す作品の違いをよく表しています。私が自身のオリジナルで生産する作品は数百程度で、数千から時には数十万単位で大量生産される大手メーカーの製品とは異なります。モビール・シャンデリアを例にとると、16モデルほどが存在する中で、人気のものもあれば、世界に10数台しか存在しないものもあります。オリジナルブランドではそうした限られた要望にも個別に対応しています。

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TIP OF THE TONGUE / Michael Anastassiades

他にも「マイケルアナスタシアデス」では大手メーカーではなかなか実行に移せない取り組みを行っています。その一つが、塗装を施さない無垢の金属の採用です。経年変化は、時間の顕れのようで、作品自体の成長のように捉えています。変わらないものは何もないと考えているので、作品も身の回りのものと同じように、変化していくのは美しいことだと考えています。

※金属は、塗装をしないことで表面が酸化し、だんだん色や質感が変化します。

マイケル・アナスタシアデス本人が森の中に佇むポートレート

今後も作品の開発やアイディアの探求を続けていきたいと思います。「マイケルアナスタシアデス」というオリジナルブランドも、自由にアイディアを探求する場として今後も大切にしていきます。
最後にみなさんにお伝えしたいことは、何か自分が得意なことがあれば、信じてやり続けていれば、誰かが必ず見つけてくれるということです。

トークセッション後はYAMAGIWAから、倉俣史郎デザインの照明「K-Series」を贈らせていただきました

トークセッション後はYAMAGIWAから、倉俣史郎デザインの照明「K-Series」を贈らせていただきました

トークセッション後の
インタビュー

— マイケルさんはかつて東芝のインターンで日本を訪れたと聞いています。その際、倉俣史朗さんのデザインと出会い衝撃を受けたそうですね。倉俣さんはYAMAGIWAにとっても非常に重要なデザイナーで、彼の作品を現在も生産しています。マイケルさんは倉俣さんのどんなところに惹かれたのでしょうか。

私が東京を初めて訪れたのは1991年のことでした。かねてより日本文化に興味があり、実際に体験するため、3ヶ月ほど夏のインターンとして東芝に入りました。その間、様々な場所で倉俣さんの手がけた様々な作品に出会い、彼の詩的でユーモアに溢れたアプローチに感銘を受けました。
私は人生において、ユーモアを非常に重要で本質的な存在だと思っています。私自身作品の中でユーモアをよく使います。詩的な要素とユーモアはどちらかだけではなく、バランスが大切で、たとえば私の作品である「ティップ・オブ・ザ・タン」ではガラスの球体が中央から突然転がり落ちて、割れてしまうという驚きに満ちた瞬間を、不安の現れとして切り取っています。

会場にあるペンダント照明「ピークス」を示しながらアナスタシアデス氏に質問するYAMAGIWA社員

— ちょうど今会場に新商品の「ピークス」が展示されています。どんな思いでデザインされたか教えてください。

私にとってピークスは「影の遊び」、影を詩的に観察する探求です。点灯すると下に向かって光のグラデーションが見えるのが興味深い点だと思っています。表面仕上げはチョークを思わせるマットなもので、光を吸収するため反射が抑えられます。この仕上げによって影がはっきりと現れるようになっています。また、消灯時はペーパークラフトのようで、一見すると照明には見えません。このプリミティブな円錐形にどのように光を当てるか、そしてそれを上下どちらに向けるのか。多種多様な使い方ができる作品です。

セッション後にYAMAGIWAに向けて残されたアナスタシアデス氏のサイン

— 過去のインタビューで、キプロス島での引越しのお話を拝見しました。新しい家を建てる際、お父様が部屋を明るくしたいと言ったところ、担当された建築家の方が「夜には夜の、昼には昼の意味がある。だから無理に明るくしてはいけない」とおっしゃったそうですね。その言葉がきっかけで、照明デザインの道を進まれたとお聞きしましたが、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?

この出来事は照明デザイナーとして振り返ると大きな出来事だったように思います。世界的に見ても人は暗闇を恐れ、夜の空間も昼のようにしがちです。しかしこれは妥当ではありません。あなたが照明デザイナーを目指すなら、自分を鍛えるためにするべきことは暗闇に親しむことです。そうすることで初めて光をデザインすることができるようになります。

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