新商品発表会 2023「DISCOVER MORE」
イベントレポート
後編
@ YAMAGIWA OSAKA
2023年6月、YAMAGIWAは建築家・永山祐子氏と共に開発したペンダント照明「FUWARI」を発表しました。セードと光源というミニマルな構成に、逐次成型という新し技術と素材の特性から自然に生まれる曲線美を活かしたデザインには、氏の建築と光をめぐる理念が色濃く反映されています。
イベントレポート後編では、永山氏がYAMAGIWAに感じた「ものづくり」の土壌、照明にまつわる哲学、そしてFUWARIに込めた思いについて紐解いていきます。
YAMAGIWAとのコラボレーションのきっかけ
ー今回、YAMAGIWAからのオファーをお受けいただいた理由について教えてください
私が青木事務所(※1)に入ってから「予算に余裕のある住宅はYAMAGIWAを使う」というイメージがあり、憧れの存在でした。当初、私が担当していたのはローコスト住宅で、採用できませんでしたが、YAMAGIWAの器具自体には好感を持っていました。そこから自分がYAMAGIWAのカタログに載る商品を作れるなんて、昔の私が聞いたらびっくりするでしょうね。今回、こういったご縁をいただけて嬉しく思います。
ーそういったきっかけがあったのですね。弊社としても、本当にうれしく思います。
多分私だけでなく、設計に関わる方にとっては、YAMAGIWAは憧れなんじゃないでしょうか。
YAMAGIWAの印象
ーYAMAGIWAと商品開発を行った上での印象を、あらためて教えてください。
本当にここまで、じっくりあきらめず、並走して下さるんだなと驚きました。途中で時間が空いてしまったり、素材も大きく変わる中で、諦められてしまうのではないかとも思ったんですが、一緒に作業をする中で信頼関係が築け、熱意を持って試作品まで作っていただくことができました。この粘り強さで、今までのプロダクトも世に出してきたんだな、というYAMAGIWAの一面を垣間見たというか、一緒に体験させていただいたという思いです。
ーチームの熱量や、情熱についても感じられましたか。
そうですね、それはすごく感じました。(FUWARIの)形や、吊り方ひとつ取っても、最初は難しいと思われたこともやってみたらできたみたいなことって実は今回すごく多くて。それをポジティブに捉えるとしたら、そういう本当に沢山作ってみてトライしたからこそ出てくる解法、ただ机上に何かモノを描いているだけではなくて、作る人とのコミュニケーションの中から、生まれてきた解法。
それが【モノづくり】ってものなんだなと。ただ考えたものがポッと出てくる訳ではなく、試作のプロセスの中から、何か良いものが出てくる。それが面白かったし、今回の開発には特に、それが詰まっていると思います。
FUWARI開発の理由
ーではそのFUWARIについて教えてください。世の中にすでに多くのペンダント照明がある中今回一から開発された意味、照明を作る価値についてお伺いできますでしょうか。
仰る通り、世の中には素敵な器具がいっぱいあって、その中には自分が好きな器具もたくさんあります。それでも、自分で作ってみたいと思ったのが、率直な思いです。
開発する上では、自分がデザインした様々なタイプのプロジェクトの空間の中に入れやすい、使いやすいものがいいなと考えました。住宅はもちろんのこと、商業、ホテルなどに使えたらと思っています。いつもは自分で照明を選ぶとき、カタログなどを見てセレクトするんですが、その中に自分が作った、色々なシチュエーション、住宅はもちろんのこと、商業、ホテルなどに合わせやすい商品があったらいいなと思いました
建築の"彩"としての照明
ー過去に記事の中で永山さんが「建築に彩を入れたい」という表現をされていたのを拝見しました。「彩」とは具体的にどのようなものを指すのか教えてください。
今の照明の考え方に、例えば施設照明なら、照明そのものが見えないよう間接照明にしたり、ダウンライトでもサイズが小さくなっていくとか、そういう存在が消えていく考え方があると思うんです。
一方、装飾照明には、器具そのものの美しさや、器具の素材に光が当たった時の反射の美しさとか、そういうプロダクトとしての美しさを追い求める光の表現もあると思っていて、私は仕事上いつも、その両方を使います。
なるべく照明が見えないようにしているから中でこそ、ここぞという所にはプロダクトとして魅力のある光を使いたいなと思うので、FUWARIもそういう器具であったらいいなと思っています。
自分らしさを演出できるFUWARI
ーFUWARIは、住宅でも使いやすいように多灯ではなく、一灯でも映えるよう意図されて作られているのでしょうか。
一灯でもある程度の存在感があり、多灯吊りしてもうるさくならず、使い方によってちょっと違った見え方が生まれるよう考えました。できれば使う方の工夫で、ちょっとずつ見え方を変えてアレンジしてもらうという使い方が良いのかなと思っています。
ー使う方の工夫というのはどのようなことでしょうか。
例えば多灯吊りにしたとき、三角形の照明の形を生かして、角の方向をどちらに向けるか変化を加えるだけでもオリジナリティが出せるじゃないですか。
(設計の現場で)使う立場からすると、完結し切ったデザインや、主張が強いものは「この照明使いました!」みたいな形で終わってしまうのですが、そこに吊り方で表情が変わる等の要素があると自分のオリジナリティ、自分らしさ、ここにしか無い感じが作れると思います。そういう意味では、FUWARIをうまく利用して、自分なりの光空間を皆さんに作ってもらうのが私の理想の使い方です。
次回作について
ートークショーでは、FUWARIの別の形のものを作りたいというお話もありましたが次回があれば、作りたいものなどあれば、教えて下さい。
1回形になったので、夢がどんどん膨らんでいます。今回はペンダントでしたが、住宅の中で足すとしたら……みたいな視点でいうと家具寄りで考えてもいいのかなと思います。
ー家具寄りというのはどのようなものでしょうか。
ただのペンダントではない方法も展開としてあるのかなと思ったりして例えばスタンドでアーチ状のアームの先に飾ってもカワイイなとか色々構想が広がります。今回使った逐次成型も、いろんな形ができたりするので、また実験しながら作れたらいいなと思います。テーブルスタンドや、ポータブルランプなどに展開してもいいですよね。
ー期待が広がりますね。本日は本当にお忙しい中、本当にありがとうございました。
※1 青木淳建築計画事務所
今後も YAMAGIWA OSAKAではFUWARIをはじめとした意匠照明を通し、 進化するYAMAGIWAを発信してまいります。ぜひショールームに足をお運び下さい。
会場の様子
商品ピックアップ
上段左から永山祐子氏デザインのペンダント照明「FUWARI」、グラスファイバーで黄昏の光を再現するシリーズ「TWILIGHT」、新たに取り扱いを開始したスペインのブランド「CARPYEN」からテーブル照明「CAPSULE」とペンダント照明「REBOUND」。
下段左から和風照明の新作「SUI / SYOKU」、オリジナルの木製ペンダント照明「ORB」、VERPANの「VP GLOBE」シリーズ、正面玄関に設置されたNEMOの「KEPLER」。
Photo:Masaaki Inoue
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