
Report: 3daysofdesign 2025
ニューワークス流のホスピタリティ
スリーデイズ オブ デザイン2025レポートの第1弾は、2015年創立の新鋭デンマークブランド「ニューワークス」の模様をお届けします。
ニューワークスはYAMAGIWAの2025年照明カタログより新たに扱いが開始されたブランド。様々な素材のバリエーションを用意し、それぞれの特性や印象を活かしたデザインを展開しています。








ニューワークスのユニークな点は自身を北欧第三世代のブランドと位置づけている点。ルイスポールセンやカール・ハンセンなど伝統的な北欧ブランドを第一世代、ムートやアンド・トラディションなどニューノルディックのブランドを第二世代とし、自らをそれに続く第三世代のブランドと位置づけ、既成の北欧デザインを覆す新しいデザインを模索しています。
YAMAGIWAもこうした取り組みに共感しており、今回の取り扱いに繋がっています。


ニューワークスの展示テーマは「Art of Welcoming」。コペンハーゲン近郊の歴史的建造物、ベルンシュトルフ宮殿の敷地内には「いかに人々を温かく迎えるか」をコンセプトに「ニューワークス・レジデンス」と銘打たれたホテルを思わせる空間が展開されていました。
インテリアデザイナー、ロッタ・アガトンと設えた空間は、単なるホテルライクな味付けではなく、ニューワークスが今季拡充した「ホスピタリティ」を重視したアイテムを体験するためのモデルルームとして設計されたものでした。
以下ではその中から、特に照明にフォーカスしてご紹介します。

Nebra
吹き抜けや廊下など様々な空間で目にしたのが「ネブラ」ペンダントライト。シェードを変形させフォルムや配光を変えられるユニークな機能があるモデルです。今回の展示でも様々な展開が見られたネブラですが、中でもシェードを上向きにし、シーリング照明を思わせる上配光の間接照明として使用しているのが印象的でした。
コード長を極小にし、天井近くにペンダントを吊る活用は、日本ではまだあまり馴染みがないですが、従来のペンダント照明とは異なる機能性を発揮する、エポックメイキングな活用ではないでしょうか。
Tense
テンスは曲線を主体としたデザインのペンダントライト。こちらも今年のカタログから掲載をスタートした新商品です。
現地で改めてみると、空に浮かぶ雲のような有機的なデザインが印象的で、浮遊感や軽やかさが感じられました。面全体から放たれる柔らかな光に包まれる体験は、このモデルならではのものではないでしょうか。
Kite
こちらも2025年カタログの新作照明「カイト」。シンプルなフォルムが却って、セードの有機的な繊維感を浮き彫りにし、天然素材のような趣深さを醸し出しています。今回の展示では集団で設置され、現代のシャンデリアともいうべき華やかさを感じました。高さの違うモデルを高低差を変えて吊ることで弾むようなリズムを出しているのも活用のポイントでしょうか。
円と直線で構成された立体的なフォルムは、高さにバリエーションを設けた構成にすることで凹凸が強調されます。後にコペンハーゲンの飲食店でも、受付の前で多灯吊りされているのを見かけましたが、賑やかな印象はまさにこうした顧客を迎える空間に最適なものだと感じました。
一方で単棟吊りは一番フラットなものを使うと特にスリムで落ち着いたミニマルな印象になり、同じ器具でも違う役割を持てる点が興味深く感じられました。
KIZU
プラスチックと石材の「キス」を捩った名前の「KIZU」。その名の通り、天然石の重厚な風合いを存分に楽しめるデザインです。ブランドによるとオレンジ系の「ブレッチア・ペルニチェマーブル 」が本国で一番人気とのことでした。
会場で改めて感じたのは、やはり北欧のインテリアとの親和性の高さ。大理石の建築はもちろん、無垢の木材の表情とも相性が良く、北欧でよく見かけるホワイトオーク製のサイドテーブルへの収まりも良いデザインです。木製家具との相性がいいため、同じく日本の住宅にもよくマッチします。
Brolly
ロビーに設置されていたのが「ブロリー」ペンダントランプ。落ち着いたダークトーンのホテルラウンジ演出に最適なモデルだったと思います。円錐形のランプシェードをもつシンプルなペンダントは多く存在しますが、真下に来ても眩しさを感じないように設計されているブロリーのようなモデルはそれほど多くありません。
一番の特徴は円錐のシンプルなシェードの中にある「へこみ」。この設計により光が均一に拡散されており、ミニマルな中にもデザインの細やかな奥行を感じられました。
Kantarell
最後は今回の展示でも印象的な存在だった新作「カンタレル」コレクション。カンタレルは北欧のポピュラーな食材のキノコで、形状もよく似ています。
端部の巻き方が異なる2種類のシェードがあり、とりわけ水平タイプはユニークで、キャッチ―な印象です。表面にはマットな仕上げが施されており、ギラつきや眩しさを感じさせない反射光が柔らかに灯ります。
普遍的なデザインはインテリアと自然と調和しており、様々な空間に調和する新たなニューワークスのアイコンの登場を感じさせました。

当日はトークイベントも実施され、ニューワークスのデザインディレクターや、旅行とデザインを切り口に活動するインフルエンサー、そしてコペンハーゲンのミシュランレストランのオーナーらが登壇し対談を行っていました。テーマは「相手を迎え入れるっていうのはどういうことか?」ということで、自身の旅行中や、レストランでの体験の中でどのように「歓迎されている感覚」を演出するかを議論していました。


中でもレストランオーナーのカミラ・ハンセン氏の”It's not about perfection. It's about intension.”という言葉は印象的で、完璧さではなく意図。どういう思いを伝えるためにデザインしているかが大切だという観点は、今回の展示全体が体現していたテーマだったと思います。製品が採用する多様な素材も、それぞれ異なる意図のもと採用され、意図を持って語るために使われているように感じます。

最終ゴールがおもてなしやホスピタリティにつながるニューワークスのアプローチは、他のブランドにはない個性だと感じました。相手にやさしく寄り添う姿勢、それがニューワークスが急成長している原動力なのかもしれません。
Report : Daisuke Kobayashi (YAMAGIWA)
Photo : YAMAGIWA
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