確固たる信念のもとにプロダクト作りを行うスウェーデンの照明ブランド、Wästberg(ヴァストベリ)。創業 2008年の新鋭ながら、早くも北欧照明の中でも独自の立ち位置を確立しています。



その特徴が徹底した「人間中心のデザイン」。光のニーズを身体と感情という2つの側面に分け、両面から人間が心地よく暮らせるあかりを手がけています。その姿勢は、照明器具のみならずキャンドルやオイルランプをデザインしていることにも表れています。
日本でまとまった数が見られる機会は今回が初となるヴァストベリですが、国内では早くからスタイリストとコーディネーターの間で話題になっていました。



インテリアスタイリストとして数多くのプロジェクトに携わる黒田美津子さんもその一人。
北軽井沢で行われたオープンアトリエ&企画展『unplugged/山の上等』では、黒田さんの企画スタイリングのもと、ヴァストベリの照明が大胆にフィーチャーされた展示が行われました。
今回は黒田さんにヴァストベリの照明の魅力や、イベントの内容についても深く掘り下げお話しいただきました。当日の様子もあわせてお楽しみください。


ー ことし2024年から、YAMAGIWA はヴァストベリの輸入をスタートしました。実は以前から黒田さんもこのブランドに注目されていたと聞きましたが、魅力を感じたのはどんなところでしょうか。


まず、芯のあるもの作り、はっきりとした信念に基づいて製品を生み出している姿勢が好ましいと思いました。時代に流されず、鋭いデザイン感覚で一歩先を行っているという印象。

ヴァストベリ オフィシャルサイトの言葉、"One eye sees, The other feels."が物語るように、照明を単なる製品としてではなく、「心地よさ」、つまり光のある生活そのものの快適性を求めて作り上げているからだと思います。その結果、LEDであっても人工的な光に感じさせません。
目指すのは、「灯り」とともに上質な時間を持つ人生を過ごすということ。そんなヴァストベリからのメッセージを感じます。


"One eye sees, The other feels."
20世紀の画家、パウル・クレーが残したこの言葉は、Wästbergの照明哲学を的確に言い表している。
私たちは、光とは物理的なニーズ・情緒的なニーズの両面に応えるべきだと考えている。つまり、人間工学やサステナビリティ、コストパフォーマンスのように数値で測れる部分と安心感や親密さなど測定不可能な部分、この両方を満たしてこそ、心地よい光だといえるのではないだろうか。

ヴァストベリ オフィシャルサイトより




ー そんなヴァストベリをつかった今回のイベントスタイリングのテーマについて、教えてください。


コロナ以降、都心と地方といった2拠点生活をする人が増え、ここ軽井沢エリアにもどんどん住宅が新築されています。しかし、かつての別荘地とは異なり、都会の住宅と変わらない雰囲気の建物、インテリアが多いように思います。それに、せっかくテラスがあっても、建物に比してチープな家具を使用している様子が見受けられます。

せっかくの山の家です。最近は屋外家具でも上質なものがたくさんあるので、その土地に合った雰囲気で、快適なインドアアウトドア(半屋外)生活を過ごしてほしいと思い、おすすめのインテリアを集めてみました。



ヴァストベリの採用については、スウェーデンの製品だけに、樹々の中に佇む住宅によく似合う照明なのではないかと思いつきました。北欧によく似た自然環境で展示したら映えるし、ヴァストベリの考え方をよく伝えることができるのではないかと。



ただ、緑の多い環境にナチュラルなウッドの家具、ミニマルデザインの照明だけだとストイックになりすぎるので、今年らしいカラフルなオレンジレッドをアクセントに加えました。



そして見どころは、庭のいちばん奥に設置した本物の温室。部屋に見立ててワークルームをスタイリングしています。樹木や草と一体となった透明の部屋が、夜には照明の灯りで浮かび上がる仕掛けを、幻想的なインスタレーションとしても楽しんでもらえたのではと思います。



ー 展示の中では、ヴァストベリのw201 extra smallがアトリエの玄関の窓辺で使われていますね。


実はここに関しては常設で、照明のために窓を作ったようなものなんですよ。
アトリエは撮影をすることも多いのですが、w201は絵になるフォルムで、画面構成の上でも決まりやすくフォトコンシャスですね。雑誌にも何度も採用されたのがこの場所のカットです。
使ってみて初めて気づいたのは、LEDなのに光が強すぎず、よく考えて設計されているなということ。



照明器具は、フォルムだけではなくそこから放たれる光の広がりが重要なので、一見引き算のデザインでサラッと作られたように見えますが、実際には深い考察と時間をかけたものだと感じられました。


Haloの内部 電球に見える部分も実は器具の一部としてデザインされているから、ソケットの金具などが無い。見た目も配光も“捨て角度“がない


ー その玄関から奥に入ったお部屋、ダイニングテーブルのhaloのスタイリングには驚きました!
テーブル面から照明の下端まで50センチという低さ。普段現場では80~90センチで納めることが多いので、低すぎて使いにくいかと思ったら……全くそんなことはない。座ったときの居心地の良さが抜群でした。


そう、これはぜひこの低さで吊ってほしい!
重心が下がることで空間のなかにメリハリが出て広く感じられるし、器具の美しいフォルムがより美しく見える。ここまで下げると頭もぶつけないですしね。ペンダントの高さって、5センチの差で全然見え方が違うんですよ。haloは配光が広いので、低く吊ってもテーブルの隅々に光が届き、食事も書き物も十分できました。


ー リアルな住空間でのヴァストベリの照明の取り入れ方、他にどんなコツがありますか。



ペンダントランプはやはりダイニングに。モダンな照明を、あえてクラシックなテーブルクロスや食器と合わせるミックススタイルの設えがきっと魅力的。新しいマンションだけでなく、模様替えやリノベーションのときに既存のインテリアに加えると、同じ部屋が急に新しさをまとうように思います。引き締め効果があるんですよ。


ー これまで大切にしてきたインテリアをがらっと変えなくてもいいんですね。そう考えると取り入れやすくなりますね。



例えばアンティークやヴィンテージが好きな方は、ついつい他のものもヴィンテージで固めがちで。そうすると、古色(こしょく)に古色でメリハリがなくなってしまいます。そこにモダンなものを足すとすっきりとバランスがとれていいんです。
でも、モダンなものも何を足したらいいかわからないという方も多いので、その答えがここにありますよ、という感じですかね。器具デザインの完成度の高さに対して価格も手ごろだと思います。



特にシニアの方や住み替えの方には、人生締めくくりの20年、30年をいい環境で暮らしてほしいといつも思ってるんです、自分も含めて。そういう時にぜひ選んでほしい照明ですね。



Styling: Mitsuko Kuroda / Laboratoryy
Photo: Masaaki Inoue / Bouillon


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